伝統工芸品から世界へ

工芸品のガラスと工業用ガラスの違い

ガラスは工業用ガラスと工芸用ガラスの二種類に大きく分かれると思う。

工業用ガラスは、窓ガラス等に使用される板ガラスを中心に、機械で生産されるガラスのことだ。
建築用の板ガラスの他に、自動車や飛行機など乗り物に使用される窓ガラス、瓶やグラスなど日用品のガラスやガラス食器、ビーカーやガラス棒等の実験器具、姿見等の鏡、カメラ等のレンズ、蛍光灯や白熱灯等のガラス、液晶ディスプレイ、太陽光発電用パネル、光ファイバーなど科学技術に必要なガラス等が工業用ガラスだ。変わったものではラインストーンやビーズも含まれるだろうか。

ガラス工芸は、機械ではなく伝統にこだわった人の手が作るガラスではないか、と考える。人の手ではないと生み出せないような、繊細な表現力が必要な、芸術品ではないか、と。
そのため、大きなガラスではなく両手に収められる範囲のわりと小さなガラスが当てはまっている。
日本なら、江戸切子や薩摩切子、琉球ガラスがそれである。グラスやガラスボウルの他には、ステンドグラスや、ランプシェード、量産品ではないアクセサリー、蜻蛉玉、風鈴等も含まれる。
日本以外だとヴェネチアンガラス、ボヘミアガラスが有名である。

日本で「切子」と呼ばれるカットグラスの歴史は新しい。
ガラスは縄文時代や弥生時代に装身具として発達していたが、大化の改新以後から装身具を身に着けることがなくなり、日本からガラスを製造する技術は失われてしまった。
それから長い間、ガラスとは、海外からの高価な輸入品だったのだ。正倉院には当時の美しいガラスボウルが残されている。日本のガラス技術が花開くのは江戸時代であり、装飾品(根付けやかんざし等に使用される蜻蛉玉等)やガラスボウルといった小さなものが主流だった。「切子」もそのころに生まれたものだ。江戸や大坂、薩摩あたりで盛んに製造されていたが、明治には文明開化の折に再び廃れてしまった。

壊れやすく繊細な切子ではなく、欧米のガラスのように丈夫で大量生産を行えるように工業化が行われていったためだ。明治政府からの奨励もあり、ガラス職人たちは社員となり、工房は企業となり、昔ならではの工法で切子を生産しづらくなったのだ。
その後、大阪や薩摩の職人が東京へ渡り、大阪や薩摩からは工芸ガラスがすっかり絶えてしまう。江戸切子のみ、それらの職人の技術を取り入れ、細々と残ったのだ。(その後、近年になって薩摩切子は江戸切子を参考に復活した)

失われた技術の復活や、伝統工芸として、現在また注目を集めているガラス工芸。
日本では、現在職人のなり手がおらず、また衰退の危機にあるらしい。安い工業品と比べ、手間のかかる切子はどうしても高価になってしまうためだ。
現在は、地域のブランド品として質を磨き上げ、世界へと工芸品を売り込んでいくことで、生き残りをかけている。そういう工芸品は多い。(有田焼はその筆頭ではないだろうか)工芸品もグローバル化されていく世の中なのだ。

※工業ガラスについて、詳しくは旭硝子や日本板硝子等の有名メーカーサイトをご覧ください。
※また、ガラス修理、ガラス交換は業者サイトへ。
家具やドアのガラス修理も業者サイトをご覧ください。

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